こんにちは、きっかわです。この記事では現役大学職員が、私立大学等改革総合支援事業について説明します。
私立大学等改革総合支援事業とは、教育や研究の大学改革に組織的・体系的に取り組む私立大学等を選定し、財政基盤の充実を図るため重点的に支援する事業です。頑張っているところには多く補助金をあげるね、というもので、特別補助額に上乗せされて学校法人へ支給されます。財源は税金です。
この補助金は使途が定められていないので、そのまま法人の口座にキープできます。機器を買った分の何割かを補助、というタイプとは異なるので、補助総額は小さいものの、大学事務職界隈では目玉な補助事業として注目されています。
以下の文部科学省HPに制度の概要が掲載されています。
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1340519.htm
出典:文部科学省
タイプ1からタイプ4まで分かれており、大学は全タイプに申請可能です。すべて採択されている大学もあります。
大学はひな形様式のエクセルに自己採点形式で記入していきます。合計点を算出し、上位の大学から採択されていく仕組みです。抜き打ちで会計検査院による実地検査があり、虚偽申請をした場合はペナルティが課されます。
設問の例としては、
___
以下のア~カのいずれかの要素を含むアクティブ・ラーニング型の科目を開講しています か。
アPBL=課題解決型学習
イ反転授業=知識習得の要素を授業外に済ませ、知識確認等の要素を教室で行う授業形態
ウ ディスカッション、ディベート
エ グループワーク
オ プレゼンテーション
カ 実習、フィールドワーク
・・・
回答1 当該年度開講科目のうち50%以上 3点
回答2 当該年度開講科目のうち30%以上 2点
回答3 当該年度開講科目のうち10%以上 1点
回答4 上記のいずれにも該当しない。 0点
___
といったものがあります。設問数と、タイプごとに特色を出す大学の設問内容は以下の通りです。タイプ1 30問 特色ある教育の展開。タイプ2 18問 特色ある高度な研究の展開。タイプ3 21問 地域社会への貢献。タイプ4 18問 社会実装の推進。
頑張った大学には多めに補助しますよ、というこの制度。なかなか理にかなっているものだと思います。一方で、全てのタイプ、全ての設問に対して高得点となるための大学運営をしていると、画一的な、政策の思惑通りに動いてくれる大学が量産されるという可能性が生まれます。
画一的な大学が量産されることは、悪い事ではないです。今までは各大学が「補助金くれ」「大学の自治を守れ、好き勝手やらせてくれ」という運営でした。無法地帯とまでは言いませんが、大学内の合意形成も政治力如何でどうにでもなる、という風潮もありました。もちろん大学によって個別の事情がありますが。
悪い言葉を使えば、補助金は大学運営のために利用すべきだと思います。「補助金もらえるからこう運営しよう」ではなく、「運営の方針はこうだ。お、たまたま補助金をもらえそうじゃないか、ラッキー」というイメージです。もしくは「政府の方針として○○だから、我が大学も○○の方針を踏襲しよう、きっと補助金投入があるはず」という狙いを定めた運営が必要なのではないかと考えます。その場その場の政策に振り回されることなく、自大学の強み弱みの整理、活用を日々行うことが大切だと胆に銘じ、大学事務を遂行していきたいと思います。
まとめ
・私立大学等改革総合支援事業とは、大学改革に取り組む学校法人に上乗せ補助を行う制度
・自己採点方式だが、虚偽報告をすると会計検査院よりペナルティを課される
・補助金に合わせて大学運営をするのではなく、大学の指針を確立させることを優先すべき