こんにちは、きっかわです。この記事では現役大学職員が、内部質保証について説明します。
大学は国民の税金から補助を一部受けており、経営状況や財務の成績を定期的にお上にチェックされます。お上の文部科学省から「定期的にチェックさせてね。その代わり合格すれば、あなたの大学は、大学として適格ですというお墨付きをあげますよ」というのが、「質保証」という制度です。認証評価と呼ばれています。
大学を作るとき 設置認可(届け出通りのキャンパスか、不備や嘘はないかチェック)
何年かに一度 認証評価(文部科学省が外部の独立行政法人に委託し、チェック)
この間に存在するのが、内部質保証です。大学自身で毎年度、自己点検評価を行い、来るべき認証評価の調査に向けての準備をします。文科省からの質保証のための自己チェック(=内部)質保証、という感じです。
下図がわかりやすいので、載せておきます。
出典:https://niadqe.jp/information/internal/
多くの大学では「自己点検」という言葉で、規程にまとめられているパターンが多いので、ご自身の職場でも確認してみてください。
さて、内部質保証制度の成り立ちについては説明しましたが、本質的な話として「この制度、必要なの?」という疑問が浮かんでくるのが、普通の感覚ではないでしょうか。実はこの制度、数年に一度のチェックである認証評価制度の後に出来ています。
・認証評価が大学の質を保証していたのに、自分たちで自分たちの大学の質を保証するってどういうこと?
・「自己点検評価を、自分たちでやれ」って、文科省が指示することはおかしくない?そんなの意識が高い組織なら自発的にやるよ。
などなど、考えついてしまいます。
ここからは私見ですが、内部質保証制度が出来た理由は、設置基準を満たすと虚偽申請した大学が、やっぱり素行が悪かったものの、文科省が数年間不正を野放しにしてしまったのではないかと推測します。
この業界は、ルールにルールを重ねていくことが往々にしてあります。名目は管理強化ですが、文科省が各大学に調査発出依頼を出し、我々が回答した後に、経産省など他省が同じような設問の調査回答依頼を発出してくることがあります。そのときの決まり文句が「△△の法律に基づき、本調査を貴学に依頼します」という文脈です。
法律やガイドラインを上書きしていくうちに、省内各部署の守備範囲がどんどん広がってしまって、業務のダブりが増えています。このことを指摘しても「大学経営は多様化しているから仕方ない」という答えしか、お上は返してこないので、誰も何も改善できません。
とはいえ官僚も制度設計が仕事なので、「何とかして今ある制度を維持しながら、新たな策を講じなくては」と考えるわけです。そうしてできたのが、認証評価制度を作った後の、自己点検評価制度制定ということになったのではないか、と考えています。
大学は補助金もらう立場である以上、お上には「かしこまりました」という対応しかできません。誤ったPDCAサイクルが回り続けてしまっているのかな、と私は大学業界の行く末を危惧しています。
内部質保証のゴタゴタ事例は、一事が万事だと思います。我々大学職員は「○○さんが言っているから間違いない」という色眼鏡を、知らず知らずのうちに使ってしまっているかもしれません。自戒の意味を込めて、内部質保証についての紹介を終えたいと思います。
まとめ
・内部質保証とは、大学自ら「大学としての基準を満たして、それを維持していますよ」と証明すること。
・設置基準による認可と、認証評価の間に数年間の時間が空くので、その間に自己評価をしておくように、という文科省のお触れのもと、自己点検評価を行っている。
・制度への疑問はありながらも、大学業界特有の制度設計により、制度は維持されていて、これからも上書きされていくだろう。