建学の精神と大学の三方針について

建学の精神と大学の三方針について

こんにちは、きっかわです。この記事では現役大学職員が、建学の精神と大学の三方針について説明します。

「建学の精神」とは、起業における経営理念のようなものです。2006年度に学校教育法に認証評価を義務化する文言が規定されたため、全ての大学が建学の精神を明文化しています。

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第百九条 大学は、その教育研究水準の向上に資するため、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の教育及び研究、組織及び運営並びに施設及び設備(次項において「教育研究等」という。)の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表するものとする。

 2 大学は、前項の措置に加え、当該大学の教育研究等の総合的な状況について、政令で定める期間ごとに、文部科学大臣の認証を受けた者(以下「認証評価機関」という。)による評価(以下「認証評価」という。)を受けるものとする。ただし、認証評価機関が存在しない場合その他特別の事由がある場合であつて、文部科学大臣の定める措置を講じているときは、この限りでない。

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「大学の三方針」は2017年に学校教育法施行規則第165条の2において明文化するよう規定されました。

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第百六十五条の二 大学は、当該大学、学部又は学科若しくは課程(大学院にあつては、当該大学院、研究科又は専攻)ごとに、その教育上の目的を踏まえて、次に掲げる方針(大学院にあつては、第三号に掲げるものに限る。)を定めるものとする。

一 卒業の認定に関する方針

二 教育課程の編成及び実施に関する方針

三 入学者の受入れに関する方針

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1のことを「ディプロマポリシー」、2のことを「カリキュラムポリシー」、3のことを「アドミッションポリシー」と呼ぶことが多いです。

 

なぜ明文化が義務付けられたかというと、中央教育審議会からお達しが出たためです。「中教審」と呼ばれるこの組織は、

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(1)文部科学大臣の諮問に応じて教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項を調査審議し,文部科学大臣に意見を述べること。

(2)文部科学大臣の諮問に応じて生涯学習に係る機会の整備に関する重要事項を調査審議し,文部科学大臣又は関係行政機関の長に意見を述べること。

(3)法令の規定に基づき審議会の権限に属させられた事項を処理すること。

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と文部科学省のHPに記載されています。「時代に合わせて教育の内容も変わっていくんだから、有識者を交えて議論しましょう」という会です。身近でホットな話題としては、「センター試験の廃止」というニュースがあったと思いますが、廃止の意見を述べたのが、この中教審です。

 

民間の重鎮もメンバーに参画しており、申し分ない会議なのですが、なぜかアウトプットは運用コストが高いものばかり…。この話題は別の記事でお伝えすることとします。

 

戻りまして、大学の三方針のことです。

中教審がなぜ大学の三方針規定を明文化させたか。「生涯学び続け、主体的に考える力を持ち、未来を切り拓いていく人材を育成する大学教育の実現する。また、大学教育の入口から出口までを一貫したものとして構築し、高等学校や産業界をはじめ広く社会に発信する」という大学でのPDCAサイクルを確立してほしい、という意図があるそうです。

 

あるそうです、と書いたのは、三方針があってもなくても実務には影響がないため、形骸化しているからです。大学の中にいて、三方針を覚えている人なんていません。

 

大学は教員が各々のフィールドを持ち、同じ学部に所属していたとしても、自営業者の集まりのような雰囲気が作られやすいです。法人運営の切り口から考えると、全職員が同じ方向を向いて「大学を良いものにしていこう」という継続した意識付けが必要であり、その旗振り役を大学職員が担うべきだと考えていく必要があるかと思います。

 

まとめ

・建学の精神と大学の三方針は、大学運営における指針のようなもの。明文化が義務付けられている。

・中教審が提言し、文部科学省が大学へ通達・指示している。

・大学をどう運営していくかは、大学自身、ひいては大学職員が旗振り役となり動いていくことが重要。

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