こんにちは、きっかわです。この記事では現役大学職員が、私立大学について解説します。
私立大学は、学校を運営する「学校法人」によって設立されます。そして会社の定款にあたる「寄附行為」と呼ばれる「決まり集」を作らなければならないと定められています。大学の所轄庁は文部科学省ですが、私立高校などは都道府県知事が所轄庁になります。自分の所属する組織により、いわゆる「お上」が変わります。
私立学校法では、教育行政(私立学校審議会)、学校法人の設立・管理・寄附行為の内容指定・理事会評議員会の決まり・解散手続・合併手続・助成や監督について、などが記載されています。
ちなみに会社法と密接にリンクしており、会社法における取締役の忠実義務が明記されるようになったタイミングに合わせて、私立学校法においても忠実義務規定の明確化を寄附行為に定めよ、とお達しが出た過去があります。
あと特殊な点で挙げるなら、学校法人会計基準があること、私学助成が法律で認められていること、といったところでしょうか。
学校法人会計基準、難しいですが理解すると面白いですよ。簿記3級の知識があれば、つながりが見えるようになってきます。
こちらは国立大学における会計基準での仕訳です。一例ですが、研究備品を買った時のケースです。
研究備品1,000を買ったとき(残存0円10年償却)
備品(資産↑)1,000/現金等(資産↓)1,000
減価償却費(費用↑)100/資産見返戻入(収益↑)100
減価償却累計額(資産マイナス≒負債↓)900/資産見返負債(負債↑)900
学校法人会計基準における減価償却については、
備品(資産↑)1,000/現金等(資産↓)1,000
減価償却額(費用↑)100/減価償却累計額(資産マイナス≒負債↓)100
となります。このあたりは実務に従事しながら学んでいくこととなります。職場には参考書籍が多くあると思いますので、ぜひ自ら勉強してみてください。
私学助成については、一般補助、特別補助に分けられています。一般補助は「大学が充実した教育を提供するための条件を満たしているか」という目的のもと、校地面積や教員数などの基本情報をエクセルシート様式に入力し回答していくものです。特別補助は「大学が独自の取り組みを実施しているか」を各大学で自己評価し、補助額の上乗せを図るためのものです。こちらもエクセルシート様式に回答していきます。
「私立大学は建学の理念のもと、独自の特色を発揮するべし。優れた教育を提供している大学に、傾斜して補助金を出しますよ」という意図で、私学助成が設計されています。
文部科学省の資料では、国公立大学への補助が収入額の4割を超えている一方で、私立大学への補助は収入額の1割程度であるとされています。「国立大学ばかり優遇して私立大学が差別されている」なんて意見を公然と述べるお偉いさんもいます。そもそもの成り立ちが異なるので比較することはお門違いだと、私立大学の中の事務職員である私は思うのですが…。この論点だけで夜が明けるほど長い議論ができそうなので、ここでは割愛します。詳細は別の記事でお話しします。
まとめ
・国公立大学と私立大学では歴史も成り立ちも異なる。根拠法も異なる。
・会計基準も異なる。
・私立大学への補助金として、私学助成がある。