こんにちは、きっかわです。この記事では現役大学職員が、私立大学の歴史について説明します。
1949年に学校教育法と私立学校法が制定されました。私立大学は「学校法人が設立する大学」として定められています。文科省によると1948年の大学数は12でしたが、1949年に178校となり、1967年には369校となっています。ベビーブームと呼ばれる人口増加時期に合わせて大学数の増加が進んだのが要員です。ただおかしなことに、人口減少社会になっても、大学の数は増え続けました。「公益に資する大学をつぶしてはならぬ」という大義名分を借りた既得権者の政治力が優先され、抑制が進みませんでした。2020年5月現在、786の大学があります。国公立が179、私立が607あります。
文科省大学入試室のデータによると、国公立大学の入学定員は2000年から2020年にかけて125,000人前後で横ばいの推移となる一方、私立大学の入学定員は2000年414,000人→2018年478,000人と15%程度増加しています。一方で18歳人口は2000年1,510,000人→2020年1,170,000人で22.5%減の予測となっています。進学率は2000年39.7%→2020年52%予測と増加傾向です。
18歳人口と進学率を用いて算出すると、おおよその進学見込み人数は2000年600,000人、2020年610,000人です。国公立大学は優先して定員充足すると仮定すると、私立大学は2000年において(600,000-125,000=)475,000人を414,000人の定員枠に進学することになります。2020年においては(610,000-125,000=)485,000人を478,000人枠に進学することになります。
また浪人生が大学生の20%を占めるという文科省学校基本調査のデータがあります。多浪生も考え進学見込み人数の10%が浪人していると仮定すると、毎年60,000人程度、受験見込み人数より受験生が多いことになります。2020年において545,000人が478,000人枠に挑戦しているイメージを持っていただければと思います。
さすがにまだ「入学希望者よりも大学の入学定員の方が多い」という事態には陥っていないようですが、人口(需要)が減り続けている中、入学定員(供給)が増え続けている、という現状は、大学経営には良い影響を与えません。
若者にとって「学ぶ場の選択肢が増える」ということは良い事なのですが、学生は「学びたい」、学校法人は「良い教育を提供したい」という本来の動機づけに沿ってサービスの授受が行われていることを願うばかりです。間違っても、学生の「なんとなく大学くらい卒業しておこう」という気持ちや、学校法人側の「どんどん入学させて学費収入を得よう」という思惑が優先されない社会となるよう、自分も大学職員として働いている次第です。
まとめ
・1940年代の法改正をきっかけに、大学の数が爆発的に増えた。
・国公立大学の数、定員数に大きな変化はなく、学校法人=私立大学が増え続けている。
・人口は減っている、でも入学定員は増えている。
・競争が生まれており、教育サービスの向上が期待されるが、学校法人側が経営優先になる危惧もある。