こんにちは。きっかわです。今回は大学と外部委託、外注について紹介します。
2020年7月9日付のNHK報道で、「大学入試の新システム 運営許可取り消す方向で調整 文科省」というニュースがありました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200709/k10012505501000.html
出典:NHKホームページ
__ここから引用___
「JAPAN e-Portfolio」というシステムは、国が大学入試改革の一環として、主導して開発を進めました。
このシステムはこれまでの筆記試験では、測定が困難とされた生徒の「主体性」を評価することが目的でした。
その運営は、去年から一般社団法人、「教育情報管理機構」に任されました。
この機構は、東京駅に隣接するビルに事務所を構えていて、会長は、金沢大学の山崎光悦学長が務め、国立大学協会の会長となっている永田恭介筑波大学学長らが、役員となっています。
機構のシステムの運用は、教育産業大手の「ベネッセコーポレーション」が担っていますが、生徒が学習内容などを記録する時に、ベネッセが発行するIDを取得する必要があったことから、教育現場から、「企業への利益誘導につながるのではないか」などと懸念する声があがっていました。
__ここまで___
とあります。教育情報管理機構に委託しているのにベネッセのID取得?と疑問が浮かびます。
中央省庁が外部委託すると、すぐ悪いイメージが上がってしまうのは、自分の思考のクセだなと感じます。ここはしっかりと事実のみにフォーカスしていきたいと思います。
教育情報管理機構HPによると、会員は大学(学校法人)がとなり、「情報通信技術を利用した学習履歴の情報管理と、教育、入学者選抜等における活用の高度化を図ることにより、我が国の教育、学術研究、文化及び産業の発展に寄与することを目的」としているとのことです。理事には有名大学の学長の名前が並んでいますね。大学業界の総意でe-ポートフォリオを推進しています、というメッセージだったのでしょう。
そして「賛助会員」という情報があります。ベネッセやリクルートの名前がありますね。
問題が複雑に絡み合っていて、大学単体では解決できない。だから外部の力を借りよう。でもどこに?公金を使って、名も知らぬ企業に委託することは難しい。だから企業名が知られていて、ブランドのある企業に委託しよう。という思考回路になります。リスクを避ける意味でも、この合意形成はやむを得ないと自分も思います。
この合意形成方法の留意点は、「委託後もプロジェクト管理を大学もしくは教育情報管理機構の人間が行う事」が成功の要件になります。プロジェクトマネージャーを外部委託の社員に任せたい気持ちになりますが、委託企業への利益誘導が多かれ少なかれ発生します。見積の単価を上げたり、余分な業務を追加したり、という形です。その意味で、私はこの政策が機能しなかったのは、どこか大事なところを「外部に丸投げ」してしまったのではないかなと予測しています。
ここまでは中央省庁の話でした。ただ文科省に限らず、個々の大学においても外部委託することは大事です。外部委託の効果の一つとして、自社の経営資源を主力事業に注力できることが挙げられます。事務職員という人的資源をすべての業務に割り振ると、資源の分散が起こり残業まみれ、パフォーマンスの低下が生まれます。そういった意味から、経営において外注を適度に活用していくことは、学生の満足度向上にもつながる施策なのです。
もし上層部が「PCに詳しい彼がいるだろう。彼にやらせなさい」という趣旨の発言をしていたら、その人とは徹底的に議論してください。経営方針(組織運営方針)の根幹が誤った方向に向かっています。PCに詳しい人に助言を求めるまではOKですが、業務をまかせるレベルまで行くと、本来業務に支障が出ます。
外部委託するか否か、という思考は個人の業務においても重要です。「これは自分がやるべき仕事」「ここから先は自分がやらなくてもまわる仕事」という切り分けができるようになります。そして将来、重大な仕事を任されたとき、「プロジェクトマネージャーは自分。ここから先は他者に任せる」という判断基準を自分で作れるようになっていきましょう。
各企業が定めている人事制度の職務基準(課長クラス、係長クラス、など)と自分の業務レベルを一致させて、どのスキルを高めるか、どのスキルのレベルを維持するか、限られた時間の中で取捨選択できるようになれば、自身のキャリアアップがスムーズに進みます。キャリアアップとはレベル上げです。効率的なレベル上げを行っていきましょう。